美容整形を受ける患者様から、時々こんな質問をいただきます。
『夏は傷が化膿しやすいから美容整形はやめたほうがいいですか?』
確かに、夏は暑くて食材も腐りやすいですし、汗や皮脂が多くなるので不衛生なイメージがありますよね。
では、実際に医学的に見たときに、夏と冬で感染率に差はあるのでしょうか?
結論から申し上げますと、夏に特別感染しやすいということはありません。
これまでにそういった論文やデータもないので、そこはご安心いただければと思います。
では、なぜ『夏に美容整形をするのは感染率が高いのでやめたほうがいい』というイメージが広がっているのでしょうか。
おそらくですが、先述の通り夏の暑さからくる汗や皮脂の増加で不衛生になるというイメージや、夏に食材が腐りやすいというイメージから、『暑さで傷が腐る=感染しやすい』という印象になっているのではないでしょうか。
実際は、感染率は季節によって左右されるものではなく、あくまで傷口の衛生管理ができているかいないか、そしてあとは運もあります。
真冬でも血が付いたまま一度も洗顔することなく傷口を放置したり、不潔な手で傷口を触っていれば感染することもあります。逆に真夏でも傷口は清潔に保ち、不用意に傷に触れずにいれば感染する確率は低くなるでしょう。
『運』というのは、どれだけ清潔に気を付けていても、感染する方はごく稀にいるからです。
とはいっても、整形後の感染率は1%あるかないかくらいのものです。
また、ときどき患者様から『感染の原因はなんですか?』と聞かれることがあるのですが、感染の経路を特定することは非常に困難です。
なにも施術していない方でも、ある日突然感染することがあります。たとえば、目のできもの(ものもらい)などもそれに当てはまります。
鼻整形をしていなくても鼻の中にできものができたご経験がある方もいらっしゃるかと思います。しかし、そのような状態になったとき、『なんで感染したのか?』をご自身で明確に説明できる方はほとんどいないでしょう。
鼻や目を執刀したお医者さんでも、患者様の生活習慣や生活環境、行動など、当然全て知っているわけではありませんから、感染の原因を聞かれても『なんらかのかたちで感染した』というお答えしか難しいのです。
そして、いざ感染してもすぐに組織がダメになるわけではありません。
感染した際に重要なことは、『感染に気付いた時点で早急に、適切な処置をする』ことです。そうすることで、感染による深刻なダメージを防ぐことができます。
感染は放置するとどんどん組織の深い部分まで侵食していきますので、怪しいと感じたら執刀医に相談しましょう。
感染した場合の代表的な症状は
●施術部位や傷口に赤いニキビのようなものができる
●痛みがある
●施術部位やその周囲が腫れてきた
などが挙げられます。
ただ、『ニキビのようなもの』がほんとうにただのニキビということもあります。
ですが、ご自身で判断するのは危険です。なにかできものができた場合には、できるだけ早い段階でクリニックや執刀医に連絡をとり、判断を仰ぎましょう。
実際に感染していた場合には、
●排膿する
●抗生剤の点滴をする
●抗生剤をのむ
などの処置を必要に応じて行います。感染の状態によっては、症状が落ち着くまで数日間、毎日処置を行うこともあります。
※処置内容はクリニックによって異なります。
こちらの症例は、当院でお鼻の施術後、3週間のタイミングで感染した患者様の修正後の症例です。もともとは鼻尖形成、軟骨移植(耳介軟骨・肋軟骨)、鼻筋の筋膜移植をしており、感染により鼻先の高さが落ちてしまったため、鼻尖形成と耳介軟骨移植で再手術を行いました。
症状が落ち着いたあと、再手術は初回手術から8カ月後におこなっています。
ご覧の通り、感染に気付いた時点で早急に処置を行ったため、形は崩れていません。
このように、感染してしまったらすべてがダメになるわけではなく、早い段階の処置でダメージを最小限に抑えることで大惨事にならないこともあります。
せっかくお金をかけてきれいに施術をしたのですから、感染が怖いのは当然です。
ですが、必要以上に不安にならず、適度な清潔を心がけて安静におすごしください。